「シカクはシカトせよ」

<お仕事で書いた文章>

たしか8月22日の『愛媛新聞』の「マスコミ時評」欄に


総選挙報道〜政策論争掘り下げて


とのタイトルで掲載されています。
その元原稿です。

選挙前のせっかくのタイミングなので、
ネットでもアップしてみます。




もともとのタイトルは・・・



シカクはシカトせよ


です。以下、本文。





 すでに言われていることでもあえて書く。今回の総選挙関連の報道は実に問題が多い。
 雰囲気に飲まれぬよう、考え直した上で、9月11日の投票に臨みたい。
 注目を浴びている言葉は「刺客」である。郵政民営化に反対した候補の選挙区には、日々著名な対立候補が送り込まれている。
 一部の報道では、「刺客」が今年の流行語大賞ではないかともささやかれる。しかしそれではあまりにも思うツボだろう。
 私自身、郵政民営化に強固に反対しているわけではない。だが、小泉政権の「構造改革」への是非はともかくとして、その劇場型政治の手法には、批判の目を向けておきたい。
 派手なパフォーマンスを繰り広げることで、注目ばかり集める。いわば「ニュースジャック」の状況を作り出すことで、自分たちに有利なように話題を限定させるのがその手法だ。
 今回の選挙戦も、敵役を大いに目立たせた上で、「正義の味方」が登場するという寸法だ。
 しかも、一気には登場しない。小出しにすれば、ずっと「ニュースジャック」が続く。極端な場合、著名人が実際に立候補しなくても、その可能性が取り沙汰されるだけで、目的は十分に果たされるのだ。
 このままでは、野党側は政策論争に持ち込むことすらできないだろう。
 今のところ多くの報道は、どの選挙区にどんな候補者が送り込まれるのかという話題にばかり注目し、各政党のマニフェスト(公約)はおまけのような扱いになっている。
 これは明らかに良くない状況だ。では、一体どうすればよいだろうか。
 マスメディアは、やはり愚直にでも政策論争を取り上げてほしい。もちろんすべてがそうある必要はないし、多少は劇場型政治を面白おかしく伝える余裕があってもいい。だが、もう少し詳細に、政策を掘り下げるところがあってもいいものだ。
 確かに野党側も、メディア戦略が貧弱な感は否めない。だが、パフォーマンスで対抗するよりは、愚直に政策論争に専念してほしい。
 そして、市民だ。選挙直前でもこうした問題が改善されない場合、われわれにできる緊急対策は、無視をすることである。大切な選挙だからこそ、時にテレビのスイッチを消し、じっくりと考えをまとめてみるのもいい。
 若者言葉で言えば、「刺客(シカク)」には「シカト(無視)」をするのが有効だ。
 今回の「刺客」が、郵政民営化の反対派候補だけでなく、結果として、健全な民主主義全体に差し向けられたものとならぬことを望みたい。(以上)