宮台真司・辻 泉・岡井崇之編『「男らしさ」の快楽―ポピュラー文化からみたその実態』(勁草書房)


9月に出させていただいた共著『「男らしさ」の快楽』が、おかげさまで好評をいただき、2刷が出ることになりました。

読んでくださった皆様に対して、ここにあつく御礼を申し上げます。
ありがとうございました。



「男らしさ」の快楽―ポピュラー文化からみたその実態

「男らしさ」の快楽―ポピュラー文化からみたその実態





↑アマゾンではブックレビューを書いてくださった方もいらして、本当にうれしい限りです。



現在、本務校のゼミのテキストとしても使用していますが、(手前味噌ながら)明らかに学生の盛り上がりが違います。


時にこちらの想像を超えた、学生たちの「男らしさ」に関する語りの面白さに、教員であることを忘れ、聞き入ってしまうこともしばしばです。


未読の方がいらっしゃいましたら、ぜひご一読ください。

(6)〜(12) マンガと基本文献で学ぶ社会学

一回ずつに分けて掲載してきた、「マンガと基本文献で学ぶ社会学」をテーマとしたブックレビュー。
面倒くさくなった(笑)のと、学生向けブックガイドのニーズがあるのとで、一挙にまとめて掲載。






<第6回>つまらない「世の中」を楽しく生きられるか(その2)
〜人は、まったり生きられない? やはり何か「目標」「夢」は必要か?いつまでも戯れてはいられない?



ヘルタースケルター (Feelコミックス)

ヘルタースケルター (Feelコミックス)

『へルター・スケルター』岡崎京子
 第5回目で紹介した『東京ガールズブラボー』とともに読んで欲しい。その、あえて戯れる生き方の危うさを問題化した一作。本作の直後、岡崎自身が事故に遭い、その後の作品は途絶えてしまった。しかし、その問いかけは今もなお続いている。


『絶望 断念 福音 映画』宮台真司
 “あえて”ではなく、誰もが“素で”「まったり」してしまった21世紀。これは永久に続く退屈の序章であり、我々はこの退屈に生きるしかないのか、それとも抜け出すべきなのか。「まったり革命」からの「転向宣言」の一冊。








<第7回>戦争について考えよう
〜「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」が相次いで公開。平和国家日本に生きる我々であっても、考えずにすむことはありえないテーマを考えよう!



〔コミック版〕はだしのゲン 全10巻

〔コミック版〕はだしのゲン 全10巻

はだしのゲン中沢啓治
 戦争映画が数多く上映される今、読んでおきたい作品。小学生のときに読んで以来、記憶に焼きついて離れない人も多いはず。戦争体験の証言者が減り続ける中で、マンガだけは雄弁に語り続けてくれる。私たちもそれに耳を傾け続けなければならないだろう。



戦後日本のなかの「戦争」

戦後日本のなかの「戦争」

『戦後日本のなかの「戦争」』中久郎編・世界思想社
 敗戦を境に、日本は直ちに平和国家となったわけではない。むしろ戦後社会の中で、「戦争」の影はいたるところに残された。男の子文化、自衛隊、そしてナショナル・アイデンティティ・・・。新たなる時代へのスタート地点だからこそ、振り返って読みたい一冊。








<第8回>戦後日本を考える
〜戦争の次は、戦後の日本社会を考えてみよう!



手塚治虫物語―オサムシ登場1928~1945

手塚治虫物語―オサムシ登場1928~1945

手塚治虫物語 オサムシ登場1928〜1959 』『手塚治虫物語 漫画の夢、アニメの夢1960〜1989』伴俊男+手塚プロダクション
 戦前〜戦後の昭和文化史を知るための一冊。ある一つの人生を通して、マンガだけでなく、この社会全体の変化をわかりやすく理解することが出来る。私は机の傍らに置いて、眠気覚ましによく読む(徹夜続きであったという手塚のエピソードを私自身の糧として)。


嗤う日本の「ナショナリズム」 (NHKブックス)

嗤う日本の「ナショナリズム」 (NHKブックス)

『嗤う日本のナショナリズム北田暁大
戦後〜平成期の文化を考えるための一冊。1970年代以降、中身のないものへのウラ読みを楽しんできたはずの若者文化。それが今、なぜ素朴に右傾化し純愛にハマるのか。2ちゃんねるなどを題材に「反省」の変容史を描く。新進気鋭の社会学者の書き下ろし。







<第9回>SF再考
〜社会を少し引いた目から見るための訓練としてSFに注目する。




藤子・F・不二雄異色短編集1 ミノタウルスの皿』藤子・F・不二雄小学館文庫)
 『ドラえもん』で有名な作者の異色短編集。表題作「ミノタウルスの皿」では、宇宙船搭乗員が、ヒトがウシの家畜として飼われる星に不時着する。作者の言葉を借りれば、こうした「少し・ふしぎ(S・F)」な体験は、自分の世界観を見つめなおすきっかけにもなる。


UFOとポストモダン (平凡社新書)

UFOとポストモダン (平凡社新書)

『UFOとポストモダン木原善彦平凡社新書
 当初、優れた科学を持った金髪の白人として描かれていた宇宙人は、やがて灰色をした邪悪な存在や、昆虫などへとそのイメージを変えていく。その変化から、現代の社会が「ふしぎなもの」を喪失し、さらに「現実感」すら希薄化させていく様子を描いた好著。







<第10回>男らしさ再考〜社会を引いた目から見ると、「あたり前」だと思っていたものの「あたり前さ」が崩れてくる。
そんな一つの事例として、昨今の「鉄子ブーム」から、女性と(鉄道)趣味の関連について考えてみたい。



鉄子の旅 (1) (IKKI COMIX)

鉄子の旅 (1) (IKKI COMIX)

鉄子の旅菊池直恵小学館
 テレビドラマの放映も始まり、今、鉄道ファンが注目を集めている。作中の「旅の案内人」こと横見氏は、国内鉄道全線全駅下車というタイトルホルダー。一般人や特に女性からすれば一見意味不明の、しかしその奥深い楽しみの世界をわかりやすく知るために。


女子と鉄道

女子と鉄道

『女子と鉄道』酒井順子(光文社)
「茶道や華道に勝るとも劣らぬ、深い魅力」を鉄道に感じる女性ファンも増加中という。『負け犬の遠吠え』で有名なエッセイストが、新幹線の「イケメン度チェック」などユニークな分析を展開する本書からは、いい意味で「男らしさの文化」の時代変容を感じる。







<第11回>多元的現実を考える〜「社会を引いた目から見る」、その見方が一つではなく、複数あるということを体得するために。



ラヴァーズ・キス (小学館文庫)

ラヴァーズ・キス (小学館文庫)

ラヴァーズ・キス吉田秋生
 主人公の高校生男女カップルに加え、その男子に憧れる男子(にさらに憧れる男子)、その女子に憧れる女子(に憧れる女子)たちの青春群像。時間を共有していても、考えていることは異なる。異質な他者と繰り返し出会う現代に、現実の「多元さ」を知るための一作。


放送禁止歌 (知恵の森文庫)

放送禁止歌 (知恵の森文庫)

放送禁止歌森達也
同名のテレビドキュメンタリー番組の製作過程を描いた一作。世に知られる「放送禁止歌」は数多いが、それらに明確な根拠などなく、ただマスメディアが「自主規制」しているだけだった。思考停止しがちなアタマに、世の中の当たり前さを疑うための好著。





<第12回>終わりなき日常を生きる
〜かつて思い描いていたより、何もなかった「未来」。しかしながら、そこに到達した我々は、それでも生きていかなければならない…。そのために必要な知恵とは何か?



ソラニン 1 (ヤングサンデーコミックス)

ソラニン 1 (ヤングサンデーコミックス)

ソラニン浅野いにお
何もない現代を、それでも懸命に生きる若者たちをさわやかに描いた一作。ラストシーンの切なさに、不覚にも涙してしまいました…。 アジアンカンフージェネレーション(特に名曲『ループ&ループ』!)を聞きながら読みたい一作。


デジタルメディア・トレーニング―情報化時代の社会学的思考法 (有斐閣選書)

デジタルメディア・トレーニング―情報化時代の社会学的思考法 (有斐閣選書)

『デジタルメディア・トレーニング』
ケータイにネット・・・。私たちは、今まで思い描いてきた「未来」の中にいる。いわば、ドラえもんのヒミツ道具の多くを、手にしてしまったようなものだ。果たして次は、どうすればいいのだろうか。そんな「便利すぎる未来」を生き抜くための思考法を説く一冊。

宮台真司・辻 泉・岡井崇之編『「男らしさ」の快楽―ポピュラー文化からみたその実態』(勁草書房)

共著が出ました。
昨日(9月24日)から配本が始まっているそうです。



「男らしさ」の快楽―ポピュラー文化からみたその実態

「男らしさ」の快楽―ポピュラー文化からみたその実態



bk1

http://www.bk1.jp/keywordSearchResult/?keyword=%E7%94%B7%E3%82%89%E3%81%97%E3%81%95%E3%81%AE%E5%BF%AB%E6%A5%BD&storeCd=&searchFlg=9





タイトルは・・・


『「男らしさ」の快楽〜ポピュラー文化からみたその実態』


・・・です。




恩師である宮台真司先生と、
研究でも趣味でもウマが合う岡井崇之さん
と私の


イクメン(=育児中の男性)”トリオ


で編者を勤めさせていただいております。



男性学は全くの門外漢ですし、
こんな本出しちゃっていいのかな・・・
という戸惑いを、今でも抱えつつも
編集作業をしているうちに
そうそうたる執筆者の方々の
すばらしくも面白い原稿が集まってくるうちに、
これは、まとめ上げなければならない著作だという
気持ち(責任感)が強まっておりました。


また、終章のもとになる
本書のまとめを考えるためのディスカッションを
編者の3人(宮台真司先生、私、岡井崇之さん)で
したときは、本当に楽しかったです。


ヤロー・トーク全開で
茶店で話しまくったので、
まとめるのが大変でしたが、
思い起こせば、岡井さんと


「ヤロウ(男性たち)」


の経験する世界のことを
多角的・内在的に掘り下げた


「論文集(スタディーズ)」


って、出来ないかねえと、
それでもって、



「カルスタ」 に対抗して 「ヤロスタ」



ってのはどうかねえ、
とか冗談半分みたいに
初めて企画でもあったので、
ここまでたどり着いて、一定の成果になったのは、
ちょっと感無量だったりもしています(笑)。














なお、宣伝文句は・・・



楽しく生きよう男たち。多様な生き方を見つめなおし、変化の激しいこれからの社会を生き抜くために新たな処方箋を提示する。<帯文>



ファッション、格闘技、ラグビー、ホストクラブ、性風俗、オーディオマニア、鉄道ファン、ロック音楽などの事例を取り上げ、楽しさの実態を内在的かつ詳細に記述しながら、「男らしさ」をとらえ直す。従来、家庭や労働における性別役割分業論を中心に否定しつくされてきた「男らしさ」に、肯定面をも含み込んだ現実的な方途を探る。<内容概略>



・・・です。

(なんだか自分で考えた宣伝文句を、さらに他人事のようにブログに再録するのは、変な気分です。すでに「自分の手を離れた」著作なので、内容の評価は、読者の皆様にお任せするしかなく、まさに「まな板の上の鯉」の気分ですね。)






ちなみに章構成は以下のとおりです。



<章構成・目次>


まえがき


第Ⅰ部 「男らしさ」のとらえ方



第一章 「男らしさ」への3次元アプローチ―楽しい男らしさの社会学へ(辻 泉)


第二章 「男らしさ」はどうとらえられてきたのか―「脱鎧論」を超えて(岡井崇之)





第Ⅱ部 自己=身体性―男たちの自己鍛錬



第三章 部族化するおしゃれな男たち―女性的な語彙と「男らしさ」の担保(谷本奈穂・西山哲郎)


第四章 男たちはなぜ闘うのか―格闘技競技者にみる「男らしさ」の現在(岡井崇之)





第Ⅲ部 集団=関係性―男たちの対人コミュニケーション



第五章 一人ぼっちでラグビーを―グローバル化ラグビー文化の実践(河津孝宏)


第六章 「男らしさ」の装着―ホストクラブにおけるジェンダー・ディスプレイ(木島由晶)


第七章 「エッチごっこ」に向かう男たち―性風俗利用における「対人感度」(多田良子)





第Ⅳ部 社会=超越性―男たちのロマン



第八章 オーディオマニアと<ものづくりの快楽>―男性/技術/趣味をめぐる経験の諸相(溝尻真也)


第九章 なぜ鉄道は「男のロマン」になったのか―「少年の理想主義」の行方(辻 泉)


第十章 ロック音楽の超越性と男性性―ピエール・ブルデューの相同性理論を基に(南田勝也)




終章 「自分らしさ」から、とりあえずの「男らしさ」へ―ポピュラー文化からみた「男らしさ」の行方(宮台真司・辻 泉)











堅苦しい紹介になりましたが、
たぶんこの本は、

↓こんな感じで





楽しんでいただくのがいいかなとも思っています。



写真は、
私の研究室の宝物コーナー(鉄道グッズコーナー)に
この本を置いてみたところです。
(まさに、私自身の「男らしさの快楽」の象徴とも言えるスペースですね―笑)





男性女性を問わず、
いろいろな方に


「男らしさ」の快楽


とは如何なるものかを
考えながら、読んでいただき
ご意見やご感想をいただければ幸いです。





















・・・そうだ!最後に大事な訂正を。


奥付のところで、
共編者の岡井”崇之”さんのお名前が






祟(=たたり)之





になっているようです。
(縁起でもない!)





ここで改めて訂正をお伝えしておきたいと思います。

(5) つまらない「世の中」を楽しく生きられるか?


ひきつづきブックガイドの5回目。今回と次回のテーマは、つまらない「世の中」を楽しく生きられるか。社会が「豊かか/貧しいか」ということと、我々が日々を「楽しい/つまらない」と感じるかということは、必ずしもきれいに対応しません。「豊か」だけれども「つまらなくて仕方ない」、若者たちにはそんな様子が見て取れます。そこで、1990年代以降顕在化してきたこの問題を考えるための文献を2つ紹介してみたいと思います。今回は、社会学者の宮台真司が「まったり系」と名づけたような、「大きな目標を持たずに、チョボチョボといきる幸せ。あえて虚構と戯れるような生き方」を考える文献です。

[rakuten:book:11135057:detail]

東京ガールズブラボー岡崎京子
 「どうせそんなに面白くない世の中。だったら、意味の無い記号とあえて戯れることで、楽しそうに生きていくしかないじゃない。」今にして思えば、どこか悲壮で、でも痛快な、「80年代」の雰囲気をあますところなく伝える一作。


[rakuten:book:10690904:detail]
『終わりなき日常を生きろ!』宮台真司
 「まったり生きろ!もはや人生に意味などない。瞬間の楽しさ(=強度)に生きるだけだ。」後に宮台は180°主張を転換させるが、1990年代という時代を知る上で最良の書。岡崎京子の主張とも通じるのであわせて読んで欲しい。

(4)「『社会』は捨てたもんじゃない」


第三回目のテーマは「『社会』は捨てたもんじゃない」。「どうせつまんない世の中だから」「何したって変わらないんですよ」と呟いてしまう前に、これらの作品に目を通すことで「世の中も捨てたもんじゃないな」と感じることができたなら・・・と思います。



リアル 1 (Young jump comics)

リアル 1 (Young jump comics)

 『スラムダンク』の作者が、障害者たちのバスケットボールを描く。単なる「スポ根」ではない。登場人物が障害を受け入れようとする過程の心理描写はまさに「リアル」。いく通りもの生き方が、この「社会」でもできることを教えてくれる。


増補版 時刻表昭和史 (角川文庫)

増補版 時刻表昭和史 (角川文庫)

夢多き「少年」の成長と、日本の近代化を同時並行的に描く。圧巻は第13章。玉音放送の最中にも定時運行していたという鉄道の姿に、個々人の集合体以上の存在としての、「社会」の凄さを感じずにはいられない。資料的価値も高い一作。

(3)「歴史観を問い直そう」


第三回目のテーマも引き続き「歴史観を問い直そう」。当たり前だと思っている自分たちの社会、あるいはその歴史について、ちょっと違った角度から眺めてみることは、社会学的に物事を考えるためのよいトレーニングになるでしょう。歴史に対して、単なる「鑑賞物」としてではなく、「現在を生きるための知恵の集積」として向き合いたいものです。


金魚屋古書店 1 (IKKI COMICS)

金魚屋古書店 1 (IKKI COMICS)

 大人たちが子ども時代に読んだ、マンガ作品の数々が主人公。今なお色あせぬその魅力に、現代を生きる若者たちも勇気づけられる。単なるノスタルジー(過去礼賛)ではない。現在を生きるためにこそ、過去を参照するそのスタンスに好感。




民芸四十年 (1958年)

民芸四十年 (1958年)

 日韓・日朝関係が悪化する現在、「朝鮮の友に贈る書」「失われんとする一朝鮮建築のために」の2章はまさに必読。民藝運動創始者柳宗悦の視線はやさしく、するどい。これからの日本とアジア諸国との信頼関係構築を考える一冊として。

(2)「歴史観を問い直そう」


第二回目のテーマは「歴史観を問い直そう」。当たり前だと思っている自分たちの社会、あるいはその歴史について、ちょっと違った角度から眺めてみることは、社会学的に物事を考えるためのよいトレーニングになるでしょう。「右より」に、今度は「左より」にと、少しづつその角度の付け方もかえていくと、この社会が今までとは違った風に見えてくると思います。


軍バリ! 1 (ヤングマガジンコミックス)

軍バリ! 1 (ヤングマガジンコミックス)

 若者の社会意識を高めるには何が必要か? 社会学者でもある原作者イー・ヒョンソク氏の壮大な思考実験としての一作。韓国における徴兵制の「再社会化機能」が面白くわかりやすく描かれる。平和主義を堅持しつつ、日本は何を学びうるか。



事故の鉄道史―疑問への挑戦

事故の鉄道史―疑問への挑戦

 日本の鉄道は世界一安全であり、車輌も徹底した難燃化がなされている。こうした車輌の発達史を、一方的な技術史ではなく、むしろ頻発した事故に対する反省史として描く。内容はマニアックだが、歴史観が揺さぶられる一冊。